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24歳で牧場主に
夜も明けない時間帯から始まる、永田家の朝。長男・雄斗さんとともに、暗闇の中で作業にいそしむ弘さん。親子の額からは、大粒の汗が心地よく流れている。
久留米農芸高校農業科(現:久留米筑水高校生物工学科)を卒業後、建設関係の会社に勤務していた弘さん。乳質規制の厳格化が進んだ24歳のとき、厳しくなった牧場の経営を立て直すために就農。心機一転の意味を込めて牧場名も変更し、「永田ブルースカイファーム」の初代牧場主となった。
新たな経営に挑戦
平成8年に新牛舎を建築。それまでのつなぎ型システムとは一線を画す、フリーバーンシステムを採用した。牛をつながず、牛舎内を自由に行き来させるこのシステムは、牛のストレス軽減に効果的。「乳質、乳量の向上につながった。ふん尿処理など、作業面でも省力化できた」と、チャレンジは見事に成功した。
さらに、平成17年には堆肥舎も建築。販売はもちろん、地域の耕種農家の稲わらと堆肥を交換することで、耕畜連携を実現。地域循環型農業の推進にも一役買っている。 |
経営基盤の自立を
酪農家にとって、最重要といっても過言でないのが「飼料」。「飼料を海外産に依存していては危険だ」と常々感じていた弘さんは、二つの新たな試みを実践している。
一つめは、地域の仲間とともに稲発酵粗飼料(稲WCS)の生産に着手。現在では2軒で約28haに作付けし、年間の飼料消費量をほぼ全て賄えるように。
二つめは、焼酎の製造時に出る「廃液」の有効利用。地域の酒造会社と提携して得た焼酎廃液を飼料として与えることで、配合飼料の使用量減少を実現した。
「近年、上がる一方の飼料コストを海外に依存していては今後生き残っていけない。自給自足じゃないけど、依存の度合いを下げれば所得の向上にもつながるはずだ」と語る瞳は、常に将来を見据えている。
幸せの価値観
平成20年には新たに、筑紫野牧場「アクアグリーンファー夢」を設立した。次男・智史さんと長女・鮎美さん夫妻が中心となり、育成牛メーンで経営。搾乳牛メーンの久留米牧場と連携した経営を展開している。
「経営規模を大きくすればいい、というものじゃない。幸せの価値観は人それぞれ。『家族みんなで酪農ができる』ということが僕にとって一番だから」と穏やかに笑う弘さん。その優しさに包まれてすくすくと育つ牛たちのミルクが、おいしい理由がよく分かる。
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ロールベーラーを操作する手つきは慣れたもの |

餌やりをする弘さん。
愛する牛たちの健康状態を見る、大切な作業だ
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